院長挨拶

 令和4年度が始まりました。新型コロナウイルス感染が始まってから、3度目の年度替りとなります。終息する気配はありませんが、自粛に疲れ、何となく慣れてしまってきたと言うのが正直なところではないでしょうか。病院も歓送迎会も行わず、年度替りを迎えることに違和感がなくなってきています。早く元の生活に戻りたいと考え続けてきましたが、最近ではこれが普通の生活なのかもしれないとさえ思い始めています。
 2021年から2022年にかけては、当院にとって歴史的な年になりました。長年の懸案だった病院の増改築に取り掛かり、今年の1月末に新棟が完成、2月1日付で入院部門、2月14日より外来部門の診療を開始しております。病棟は患者さんの利便性・プライバシーを考え、52床中44床が個室、残りの8床が2人部屋となっています。ほとんどの部屋にトイレがついており、患者さんからも好評です。「ポータブルトイレを病院から無くす事」を一つの目標にしていましたが、今の所それが達成できており、とても嬉しく思っています。残ったリニューアル部分の工事も順調に進んでおり、放射線診療部門もゴールデンウィーク明けからは本格稼働となります。これで、診療部門の増改築は全て終了し、5月末からは残った不要部分の解体が始まります。解体終了後に、外観の工事・外構工事・駐車場整備を行い、終了となります。もう一息ですが、最後まで事故のないように工事が進むことを願っています。
 長年の懸案だったハードの整備が完了しますので、ホッとしていますが、これで終わりではありません。
「仏作って魂入れず」ということわざがあるように、建物だけ新しくなっても、ソフトの面がしっかりついていかなければ意味がありません。今回の整備に伴い、色々な物の電子化・自動化を図りましたが、業務の効率化と患者さんの利便性向上がその目的です。綺麗になって機械化が進んだは良いが、患者さんにとって非常に不便になったのでは本末転倒です。このような事が起こらないように、隅々まで目が届くように人員の配置等に工夫しています。最終的には人と人の繋がりが医療の原点ですので、そこを忘れないように運営していく様に心がけています。
 4月からの診療体制に関しては多少の変更がありますが、基本的には昨年度と大きな変化はありません。
広島大学及び川崎医科大学からの非常勤医の変更はありますが、人数の変更はありませんので、これまで同様の診療の提供が可能となっています。糖尿病患者に対する外来でのインスリン導入も引き続き力を入れています。病状的には入院にて教育・治療が必要でも、仕事の都合や家庭の都合で入院ができない方に対して、外来でのインスリン導入を積極的に行っています。患者指導も糖尿病療養指導士を中心に関わり、良いコントロール状態に持っていける様に工夫を行っています。導入当初は頻回の外来通院が必要にはなりますが、入院よりは受け入れやすい様な印象です。
 病棟は、新棟稼働に伴い、地域包括ケア病床を増床しております。高齢の方のリハビリやすぐに在宅に戻れない方に対して、少し時間をかけてのリハビリや在宅復帰への準備が可能となります。今回の工事により、リハビリ室も、充実したリハビリの提供が可能となっています。また、言語聴覚士も加わり、管理栄養士・看護師とのチームで、嚥下障害・摂食不良患者に対してもより細やかな対応が可能となっています。急性期病院の後方支援・在宅からのレスパイト・高齢者の誤嚥性肺炎・脱水による全身状態の悪化した患者の受け入れ等、幅広い患者への対応が可能です。全ての患者が急性期病院へ集中すると、地域医療は容易に崩壊します。自院で対応可能な症例と高次病院へ送るべき症例を的確にトリアージするのが当院の役割と考え、これが地域医療への貢献に繋がるものと考えています。
 今年度もよろしくお願いします。

病院長 山辺 高司